4.離婚に際して確認しておく事項

(1)親権者の指定
婚姻中の夫婦に未成年の子がいる場合、双方が親権者として権利・義務を負います。これを父母の共同親権といいますが、離婚に際しては、夫婦のどちらが親権者になるかを明記しないと、離婚届けは受理されません。一般的には、親権を持ったほうが全面的に子供の面倒をみると言うイメージがありますが、実は親権には二種類あり、一つは「監護権」、もう一つは「親権」といいます。

「監護権」とは、子供を自分の手元に置いて育てることをいいます。この場合、面倒を見る親を監護権者といいます。離婚をした後に監護権のない親が子供を監護権者の許可なしで連れて行くと、自分の子供でも誘拐となってしまいます。一方、「親権」を持つ「親権者」は、子供を代表することになるので、例えば子供が何かを壊したりした場合は、自分が手元で育てていなくても責任をとることになります。

「監護者」と「親権者」は、同じ親が「親権」としてひとまとめに所有することに加え、別々に設定することができるのです。離婚の話し合いの際に相手がどうしても親権を渡さないと言うときでも、子供を自分の手元で育てたいときは、「監護権」だけでも自分が得るようにしましょう。

(2)養育費の支払い
養育費を支払う場合の支払いの算定基準に関する規則は特にありません。従って、権利者(子供を監護している親)と義務者(子供を監護していない親)の合意によって決定するのが原則となります。

ただし、2003(平成15)年に「東京・大阪養育費等研究会」がまとめた<養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案>が発表されて以来、この表に基づく算定方法が定着してきており、家庭裁判所のホームページでも見ることができるようになっています。

具体的には、
1. 権利者、義務者の基礎収入を認定する
2. 子供の生活費を把握する
3. 権利者、義務者の収入の割合で按分する

以上3点を基礎として養育費の支払いを定めるのが一般的とされています。

養育費・婚姻費用算定表はこちらから

(3)面接交渉権の取り決め
面接交渉権とは、夫婦が別居もしくは離婚した場合、未成年の子供を監護していない方の親が、離婚後に子供と会い、交流する権利です。法律上の規定がないため、必ずしも決めておく必要はありませんが、離婚後は親権を持たない親が、親権を持っている親と面接交渉について話し合う機会は限られるため、離婚時に面接交渉権についてあらかじめ具体的に取り決めをしておくことが望ましいといえます。

よくある離婚後のトラブルに、親権者が会わせてくれないというものがありますが、離婚協議時に、子供の親権や養育費の話し合いに時間を費やしてしまい、子供との面接に関しての条件を決めないで話し合いを終えてしまうことが原因です。後々の為にも、最初から細かく面接についての条件を決めておかなければなりません。決める条件としては、面接の回数・費用、送り迎えをどちらがするか、泊まりは大丈夫か、回数を増やすことは可能か、などです。子供のためにも、そしてあなた自身のためにも必ず離婚前にしっかりと取り決めておきましょう。

(4)財産分与について
財産分与とは、離婚の際に当事者の一方が、相手方に対して財産を分け与えることです。
財産分与は離婚と同時に決めるのが一般的ですが、離婚時に取り決めが出来なかった場合や、忘れていた場合には離婚後でも認められます。協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、この請求は離婚時より2年以内でなければなりません。

財産分与は①清算的財産分与(婚姻中の夫婦共同財産の精算)、②扶養的財産分与(離婚後の配偶者の扶養)、③慰謝料的財産分与(離婚による慰謝料)の3つの性質を有していますが、最も基本的な性質は、①の清算的財産分与であり、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた共同財産を、離婚を機に清算・分配するのが公平だと考えられるからです。

夫婦が婚姻中に協力して築いたものが離婚の際の財産分与の対象となります。これを共有財産といいます。逆に、婚姻前の財産や婚姻中でも相続によって得たものを特有財産といい、離婚の際の財産分与の対象とはなりません。

【共有財産の例】
①住宅や土地などの不動産
②預貯金(口座名義は無関係)や生命保険
③株券などの有価証券
④ゴルフ場等の会員権
⑤絵画等の美術品
⑥車や家具
⑦退職金(既に支払いが決まっているか、2~3年以内に支払いが決まっているもの)
⑧住宅ローンなどのマイナス財産

【特有財産の例】
①婚姻前から蓄えていた財産
②自分の身内からの相続財産
③婚姻時に実家等から与えられた財産
④婚姻前から持っていた車

(5)慰謝料について
相手方の有責行為によって止むを得ず離婚に至った場合、これによって精神的苦痛を被った者は、それを慰謝する損害賠償を慰謝料として請求することが出来ます。

慰謝料は相手方の有責行為によって受けた精神的苦痛に対するものですから、そもそも相手方に有責行為がないと請求できません。したがって性格の不一致や、親族との不仲が原因で離婚になった場合などでは、夫婦のどちらかに一方的な原因がないと慰謝料請求は認められません。また、仮に夫に有責行為があっても、妻にも夫と同程度離婚に至った責任があれば、慰謝料請求は認められません。結局、双方の責任が同程度であればお互いに慰謝料請求は認められませんし、一方の責任が相手より重い場合には、責任の重い方が慰謝料を支払うことになります。

慰謝料の具体的金額は、「精神的な苦痛」という主観的なものであること、それぞれの離婚の場合によってさまざまな事情や背景があることから、一律に明確な基準はありませんが、相場としては100万円~300万円が多いようです。

慰謝料の算定に際しては、①有責性の軽重、②婚姻期間の長さ、③相手方の資力の3つが大きな要因として考慮されると言われています。その他にも、請求する側の資力、扶養すべき未成年の子供の有無、財産分与の額などが考慮されます。なお、慰謝料の請求期間は離婚から3年以内なので、きちんと請求をしないと時効で消えてしまう点は注意が必要です。

(6)年金分割制度の利用
2004(平成16)年の年金制度改正により、離婚時年金分割制度が導入されました。

以前の制度では、夫がサラリーマン家庭の離婚の場合、夫は、厚生年金と基礎年金を受け取れましたが、妻は基礎年金分しか受け取れませんでした。 しかし、年金分割制度により、2007(平成19)年4月以降に成立する離婚については、夫婦の協議又は裁判所の決定により妻も厚生年金(公務員の場合、共済年金)の3分の1から最大2分の1を受け取ることができるようになり、2008(平成20)年4月以降は、妻が専業主婦(国民年金第3号被保険者)の場合、婚姻中サラリーマン夫が支払った厚生年金保険料は夫婦の共同負担とされ、離婚した場合、日本年金機構への2年以内の請求により(夫妻の協議不要)、厚生年金分は2分の1支払われるようになりました。

この制度は公的年金のうち厚生年金及び共済年金の給付算定根拠となっている保険料納付実績を離婚後の夫婦に分割するものであり、対象期間(婚姻期間等)中に納付された保険料の一定割合を、分割を受ける者(妻)が納付したものとみなすもので、基礎年金(国民年金)は対象になりません。

(7)履行確保の方法について
最初の方で述べたように日本における離婚は9割が協議離婚です。当事者同士だけで合意ができれば、専門家の手を借りずに離婚することも可能です。ただし、慰謝料・子供の養育費の支払いや財産分与など、相手方の金銭債務の履行が離婚の条件になっている場合が多いと思います。相手がそうした金銭をきちんと支払わないと離婚後の生活設計が狂うばかりでなく、支払わせるための裁判の申立てなど、まさに泥沼化の状態となってしまい、精神的・身体的・金銭的にボロボロになってしまいます。

そうならないように、離婚協議書は強制執行認諾条項付きの公正証書をお奨めします。

強制執行認諾条項とは、「債務者が債務を履行しない時は、直ちに強制執行を受けても異義のない事を承諾する」という旨の文言を公正証書に入れる事であり、この条項によって、債務者が債務の履行をしない時には、裁判の手続きを経ないで直ちに強制執行の手続きをする事が可能になります。

お気軽にお問合せ下さい!

お問合せ・ご相談

主な業務地域
東京23区、小平市、国分寺市、小金井市、東村山市、その他都内全域。神奈川、千葉、埼玉、茨城、山梨など関東近県も対応可能です。

お問合せフォーム