相続制度のあらまし

相続制度のあらまし身内の死というのはあまり考えたくないものですが、人間は誰でもいつかは死を迎えることになります。そして、どんな人も相続問題は決して避けて通れないものなのです。

相続に直面した場合に、出来るだけトラブルなくスムーズで円満な解決を図りたいと思うのは当然のことでしょう。

無用な相続トラブルを避けるためには、相続制度に関する基本的な知識を身につけておくことが重要です。以下にポイントをいくつか簡単にご紹介しますので、ぜひご参考にして頂ければと思います。

1.相続とは?遺産とは?

ある人が亡くなると、その人と一定の親族関係にある人が残された財産を引き継ぐことになりますが、これを相続といいます。このとき、亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」と呼びます。

そして、被相続人が生前に有していた財産であり、相続人に受け継がれるものを「遺産」または「相続財産」といいます。

2.プラスとマイナスの相続財産

相続財産は、大きく二種類に分けることができます。第一は、被相続人が持っていた現金や不動産のようなプラスの財産で、これを積極財産といいます。

それに対して、被相続人が生前に借金をしていて、それが未返済だった場合のように、被相続人が誰かに支払うべき義務も相続されます。これはマイナスの財産であり、消極財産といいます。

相続が起こると、積極財産と消極財産の「両方が」相続されます。たとえば、被相続人Aが2億円の不動産と3千万円の預金を持っていると同時に、Bからの借金1億円が未返済だった場合、相続人は原則としてそれらすべてを引き継ぐことになり、プラスとマイナスの差額だけを引き継ぐのではありません。

ですから、相続財産は積極財産と消極財産の両方をもれなく調べ、確定させる必要があります。

実際には、相続財産目録という一覧リストを作成することになります。積極財産の主なものは、現金・預貯金、不動産、有価証券(株券など)であり、消極財産の主なものは、未弁済の借金、保証債務(被相続人が誰かの保証人になっていた場合)などです。

3.単純承認と限定承認

借金や保証債務などマイナスの財産まで自動的に引き継いでしまうのは不合理です。そこで、相続には相続の承認という制度があり、2つの方法が用意されています。

1つ目は、「単純承認」です。プラスの財産もマイナスの財産もすべてまとめて相続するということであり、この場合、マイナスの財産についても相続分に応じてその責任を負うことになります。相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に何もしなければ、単純承認したことになります。

2つ目は、「限定承認」です。プラスとマイナスのどちらが大きいかよく分からないときに用いられ、「相続で得たプラスの財産の範囲内で債務(マイナスの財産)を引き継ぎます」とういうものです。ただし、単純承認は簡単にできるのですが、限定承認は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に、相続人全員がそろって家庭裁判所でしなければなりません。

4.相続の放棄

はじめから相続人ではなかったことにする手続きが、「相続の放棄」です。この場合、財産は一切相続しないことになり、他の相続人との協議に加わる必要もありません。ただし、相続放棄の手続きは、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所でしなければならず、相続人間で「私は放棄します」と宣言しただけでは、第三者に対して有効にはなりませんので注意が必要です。

5.法定相続は最後の手段

よく「(父の相続で)母と私一人だから、半分ずつに分けないといけないのですよね?」とおっしゃる方がいます。これは、民法で規定している「法定相続分」を意識されているのだと思いますが、実は法定相続は、法律の一番控えめな提言にすぎません。

相続分を具体的に決める場合、遺言があれば、遺言が最優先されます。遺言の内容について民法は何も制限していませんので、被相続人の意思によって自由に相続させることが可能です。(法定相続人以外の人間に対する贈与や自治体等への寄付なども可能です。)

実際の相続においては遺言のないケースが多いのですが、仮に遺言がないとしても、相続人全員で、財産をどのように分けるのか話し合って決められれば、それが「遺産分割協議」として優先されます。ですから、遺言もなく、相続人どうしの話し合いでも決められないときに、最後の手段として「法定相続分」という民法上の基準が持ち出されることになるのです。

6.法定相続分の基本

(1)配偶者はつねに相続人
被相続人の配偶者は、つねに相続人になります。子供や両親がいるかどうかは関係ありません。ただし、配偶者とはいえ、法律上の婚姻関係がない場合は、相続人にはなれません。婚約や同棲だけはもちろん、長年連れ添っても内縁の妻や夫ではダメです。また、被相続人が亡くなったときの配偶者に限られます。すでに離婚していたり、先に亡くなっていたりした場合は、相続人ではありません。

(2)その他の相続人の順位
子供、親、兄弟姉妹は、この順序で先順位の相続人がいない場合に相続人になります。つまり、第一順位は「直系卑属」、第二順位は「直系尊属」、第三順位は兄弟姉妹です。

「直系卑属」とは、子供、孫など被相続人よりも後の世代の直系の親族を指し、「直系尊属」とは、両親、祖父母など被相続人より前の世代の直系の親族を指します。直系尊属・直系卑属という専門用語を使ったのは、実は、子供、親というと不正確な場合があるからです。たとえば、子(被相続人から見た孫)を残して先に子供(孫の親、被相続人から見た子)が亡くなっていた場合、直系尊属の親は相続人になりません。孫(直系卑属)が第一順位の相続人だからです。

また、子供がなく、両親がすでに他界しているが祖父母が存命であったという場合、祖父母が相続人になり、兄弟姉妹は相続人ではありません。なお、「直系」ということから、配偶者の両親(義理の父母)などは含まれません。

(3)代襲相続
孫を残して子供が先に亡くなった、または本来相続人となるべき子供が相続欠格に該当したり、相続人から排除されたことによって、その子(孫)が相続人になることを、代襲相続といいます。孫の子も、そのまた子も直系卑属なので、代襲相続することが可能です。また、代襲相続は、相続人の順位が第三順位の兄弟姉妹でも起こりますが、兄弟姉妹の場合はその子供(被相続人から見た甥や姪)までで、その子供(甥や姪の子供)は代襲しません。なお、親が先に亡くなっていて、祖父母が相続人になることがありますが、これは代襲相続ではなく、直系尊属の相続権によるものであり、代襲相続とは呼びません。

(4)養子と実子の区別なし
養子は、法律上実の子と同じように取り扱われます。ですから、相続の場合に養子と実子の区別はなく、養子も第一順位の相続人です。また、被相続人を養子とした場合はその養親は第二順位の相続人です。なお、養子に出されても、特別養子でない限り、実の親子関係は消滅しませんから、養子に出された子は、実親の第一順位の相続人でもあります。

養子制度と相続でよく問題になるのは、再婚後の継子(再婚相手の連れ子)の相続です。再婚した夫婦はお互いに配偶者なので相続人になりますが、継子はそのままでは相続人になりません。もし、再婚相手の子供に相続させたい場合は、その子と養子縁組をする必要があります。

(5)非嫡出子も相続人
正式な法律上の婚姻関係にない両親の子供を非嫡出子といいます。非嫡出子も、子供であることに変わりはないので、第一順位の相続人です。ただし、法律上の親子として父親の相続人になるためには、認知の手続きが必要です。

(6)まとめ
配偶者はつねに相続人、その他の相続人には順位がありますから、法定相続分は、配偶者と、直系尊属・直系卑属・兄弟姉妹のいずれが組み合わせとなるかで決まります。また、同じ順位では平等に分けるのが原則です。たとえば、妻(配偶者)と子供(第一順位)だけが相続人の場合、配偶者と子供は1対1、つまり半分ずつとなります。子供が何人かいる場合は、同じ順位では平等に分けるという原則から、その半分を子供の数で按分します。養子、先妻または先夫との子供であっても区別されません。

同じように、配偶者と直系尊属であれば2対1、配偶者と兄弟姉妹であれば3対1となり、直系尊属や兄弟姉妹の分は、子供の場合と同様、人数で按分します。

相続順位 相続人と相続割合 配偶者の相続割合
第1位 子供  :2分の1(複数の場合は頭割り) 2分の1
第2位 両親  :3分の1(複数の場合は頭割り) 3分の2
第3位 兄弟姉妹:4分の1(複数の場合は頭割り) 4分の3

代襲相続は、元の相続人の権利を受け継ぐものなので、相続分には影響しません。たとえば、被相続人よりも先に子が死亡していた場合、その子の子供(被相続人の孫)に、子と同じ相続分が認められます。

なお、「同じ順位内では平等に分ける」例外として、非嫡出子(内縁や愛人との間の子など)の相続分を、嫡出子(法律上の夫婦の子)の2分の1とする規定(民法第900条4項但書の一部)については、法の下の平等(憲法第14条)に違反するという最高裁決定が、平成25年9月4日に示されました。この決定に基づき、民法第900条4項但書の一部を削除することを内容とする、「民法の一部を改正する法律案」が平成25年12月5日に国会で可決成立しました。この法律による改正後の民法第900条の規定は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとされています。

相続手続きの全体像とタイムスケジュール

図

お気軽にお問合せ下さい!

お問合せ・ご相談

主な業務地域
東京23区、小平市、国分寺市、小金井市、東村山市、その他都内全域。神奈川、千葉、埼玉、茨城、山梨など関東近県も対応可能です。

お問合せフォーム